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九州戯曲賞大賞に大分市の日下渚さん 「かぼす咲く」で県勢初の戴冠

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 九州を拠点に活動する劇作家の作品を対象とする「第11回九州戯曲賞」の大賞に、大分市在住の日下渚さんの「かぼす咲く」が大分県から初めて選ばれた。

 第11回は7月3日までに最終候補の5作品が挙げられ、7月13日に福岡市内で開かれた審査会で大賞が決まった。最終審査員は中島かずきさん、横内謙介さん、岩崎正裕さん、桑原裕子さん、幸田真洋さんが務めた。

 「かぼす咲く」は、「酸っぱすぎた青春と棘(とげ)まみれの今、でも、一生懸命咲いている人たちの物語」。母の死を機に実家に帰った男性が、以前は苦手だったという庭のカボスの木が家族の中心にあったことに気づき、幼なじみだった女性が置いていってしまった子どもと2人で過ごす夏を描く。日下さんは審査員から「しみじみと伝わってくる人間性の表現とカボスと大分弁を使った地域性が良かった」との評を受けた。

 日下さんは第7回(2015年)に初めて応募。その後も9回(2019年)、10回(2022年)と挑んだが、いずれも最終選考止まりだった。4度目の挑戦で念願の大賞をつかみ、「形にしたいと覚悟をもって臨んだ。道のりは長かった。受賞後は支えてくれた家族や仲間にすぐに知らせた」と表情を崩した。

 壁を越えた一つのポイントに創作スタイルの変更を挙げる。これまでは劇団で演じることを前提に、劇場の大きさや出演人数などを考慮した上で書いてきたが、「今回は先のことを考えず、白紙の状態から自分のわがままを表現した」。背景を自由に設定し、登場する人物の数も絞ったことから、人の深い内面までも描写できるようになったという。

 日下さんは大分舞鶴高校時代に演劇同好会を立ち上げ、大分大学でも演劇部で活動。自分の脚本を書きたいと2006(平成18)年、演劇ユニット「水中花」を旗揚げ。2012(平成24)年に同劇団の代表として本格的な活動を始めた。今回の戴冠は県勢としても初の栄誉。「大分でもこうした作品を作る劇団があることを知らせることができるのがうれしい。この賞で恩返ししたい」と話す。

 戯曲は演劇の脚本や台本を読み物にした文学作品をいう。「九州戯曲賞」は九州地域演劇協議会などが2009(平成21)年に創設。福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、大分県に在住または活動の場とする劇作家の発掘・育成、九州の文化芸術の活性化などを目的とする。

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