
大分市美術館が、大分の「竹工芸」の魅力を世界に発信するため、作家や学芸員の育成に特化した事業を新年度から本格化させる。
独立行政法人日本芸術文化振興会の「文化芸術活動基盤強化基金」を活用。昨年6月、同基金のうち「文化施設による高付加価値化機能強化支援事業」に申し込み、約3カ月の審査期間を経て9月10日に助成金交付決定の通知を受けた。助成額は1期3年で5,700万円。事業名は「大分発アートプラクティス発信事業-竹/キュレーション・プロデュース」。
大分県には国から伝統的工芸品として指定された「別府竹細工」があり、竹工芸分野で人間国宝2人(故生野祥雲齋さん、岐部笙芳さん)を輩出している。国内唯一の竹工芸専門学校「県立竹工芸訓練センター」では県内外から集まった生徒が知識や技術などを学んでいる。
同館ではそうした大分の「財産」に着目。世界で活躍できる若手実力作家を育成し、海外に竹工芸の存在を広めることにした。併せて、同館学芸員のプロデュース能力向上も目指す。
事業は2期5年で、育成対象者は美術家の長谷川絢さん、竹工芸作家の近藤雅代さん、木崎和寿さん、谷口倫都さん、池将也さん、青柳慶子さんの6人。訓練センター修了生の選考も予定する。学芸員は曽我俊裕さん、後小路萌子さん。事業にはファッションデザイナー・コシノジュンコさん、アートコンサルタントの米山佳子さん、竹芸家の中臣一さんが参画。宇都宮壽館長と共に指導に当たる。
準備期間を経て本年度から本格始動。10月3日~11月16日に展覧会、10月18日に記念フォーラムを開催する。来年度以降もコシノジュンコさんと作家によるイベント、海外アートフェスティバルなどへの参加を予定している。
4月15日に開かれたメディア向け説明会で、宇都宮館長は「これまでのアートと向き合うといった美術館の機能や役割にとどまらず、美術館にはどういった可能性があるか、社会に対して何ができるのかを事業を通してトライしていきたい。面白いことをやっていきたい」と説明。作家の近藤さんは「声をかけていただき光栄。事業を通して竹を世界に発信できれば」、長谷川さんは「『作家を育てましょう』というプロジェクトに参加できることは貴重。他の作家や学芸員との出会いを生かして主体的に学んでいきたい」と話した。
文化芸術活動基盤強化基金は、海外展開を視野に入れた若手クリエーター・アーティストの育成、博物館などの文化施設の機能強化を図る目的で、文化庁が独立行政法人日本芸術文化振興会に設置。事業は2024年度から2期5年を基本とする。2026年度までの第1期の事業費は60億円。今回は63件の応募があり13件が採択された。