大分市の荷揚町小学校跡地(大分市荷揚町3)で7月21日、「府内城三之丸武家屋敷跡」の遺跡見学会が開かれた。
市教育委員会文化財課が同地で2017年8月から進めている発掘調査において、江戸時代末期の様子が見えてきた、高級磁器とされる鍋島焼の破片が出土したことなどから初めて見学会を企画した。
発掘面積は約5500平方メートルで1~4区に分けて調査。同課によると、同地には7軒の屋敷があり、家老や奉行などの上級武士が住んでいたという。現在調査中の3区(約2500平方メートル)は神谷(屋)氏、岡本氏の屋敷と、上原氏、伴氏、木戸氏の屋敷の一部が当たり、調査では屋敷の境界線に当たる礎石の列や建物基礎といった遺構、皿やキセルなどの生活用具が見つかっている。「上原氏」「岡本氏」など屋敷の当主名が書かれた器が出土したことで、江戸末期の絵図に記された居住者との一致も確認した。このほか荷揚町小の前身という大分尋常小の跡も見て取れるという。
岡本氏の屋敷跡では約80平方メートルの大型建物基礎、井戸、ごみ穴、1810(文化7)年の火災後に作ったとされる火災処理土坑などが見つかったほか、井戸からは鍋島焼の破片が出土した。鍋島焼は佐賀藩(鍋島藩)お抱えの窯で焼かれた磁器で、同課では「将軍への献上や大名への贈答など、目的を持って作られていたはず。上級武士とはいえ府内藩士が持つことは考えられない。謎が残る」としている。
見学会には約150人が参加。直前に降った雨の影響で遺跡内には入れず、外周囲からの見学となった。参加者は職員からの説明を受けながら礎石列、大型の建物基礎、岡本氏の井戸、小学校跡など順に見て回った。会場には出土品を並べたコーナーも設置。「主役」ともなった鍋島焼の破片を写真に撮ったり、触れたりする歴史ファンらでにぎわった。
3区の調査は12月までに終え、2019年1月から8月に4区(約2000平方メートル)を調査する予定。同課では「明治から江戸時代末期まで掘り進んできた。今後の発掘で日本の中世までさかのぼることができれば」としている。