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大分市で宇宙飛行士の油井亀美也さん講演 満員の聴衆に「夢を諦めないで」

1900人の聴衆で埋まった会場

1900人の聴衆で埋まった会場

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 宇宙飛行士の油井亀美也(ゆい・きみや)さんによる講演会「未知への挑戦」が10月16日、iichiko総合文化センターのiichikoグランシアタ(大分市高砂町2)で開かれ、小中高生ら1900人が夢を持ち、今と向き合うことの大切さを学んだ。

「夢を諦めないで」と語る油井さん

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 大分県芸術文化スポーツ振興財団特別企画実行委員会の主催。県立美術館で宇宙航空研究開発機構(JAXA)と海洋研究開発機構(JAMSTEC)の協力で開いている「海と宙(そら)の未来」展(11月25日まで)の関連イベントで、宇宙航空分野への関心を高めてもらう目的で開いた。

 会場は生徒や一般参加者で3階席までぎっしりと埋まった。拍手で迎えられた油井さんは青のユニホーム姿で登壇。冒頭で「飛行訓練で大分空港を利用することがある。きょうは恩返しのつもりで来た」と話し、スライドや動画を交えて宇宙飛行士の訓練、宇宙ステーション補給機(こうのとり)、国際宇宙ステーション(ISS)での勤務や生活の様子について説明した。

 小学生の頃から宇宙飛行士を目指していた油井さんは、防衛大から航空自衛隊に進んだ後もその夢を追い続けた。「当時は分からなかったが、目の前の課題を一つ一つやってきたから今があると思う」と述べ、「自分の今の能力でできる目標ではなく、自分がやりたいこと(夢)を決める」「目の前の課題に一生懸命取り込む」「互いに夢を語り、サポートし合う」と夢を実現するためのポイントを説明した。

 夢を追う過程で現れる「嫌いなこと(壁)」については、「宇宙での公用語は英語とロシア語。40歳過ぎから覚えるロシア語は難しく嫌いだったが、好きになろうとしてロシアの友人との会話を楽しむことにした。おかげで今では1、2を争うほどの達者になった」と自身の経験を披露。「考え方を変えれば才能は生み出せる」と油井流メッセージを送った。

 空き時間に船外を撮影したという写真も公開。宇宙から見た日本列島やオーロラなどを紹介したほか、「地球の空気の層が薄くなっているように見える」「夜になると国の明るさの違いで国境が分かる」と、地球の不安についても言及した。

 会場は、中津市立真坂小、日田市立高瀬小、佐伯市立佐伯東小と映像を通して結んだ。児童から「病気になったらどうするのか」と聞かれると、油井さんは「薬で対処するが、歯の治療や注射は自分でできるように訓練している」と答え、会場を驚かせた。

 会場からの問い掛けにはステージを降り、質問者に近寄って直接返答。「宇宙人はいると思うか」との問いには「いるとは思うが、星同士の文明に接点がないと交流できない。地球の文明がもっと長く続けば交流できる可能性はある」と答えた。

 自身の次の目標については「月に行くこと」ときっぱり。会場に向かって「仲間になって一緒に行こう」と呼び掛け、「これからも大分には訓練で来ると思う。見掛けたら遠慮せず、話し掛けて質問してほしい」と締めくくった。

 油井さんは1970(昭和45)年生まれの48歳。長野県出身。防衛大を卒業後、航空自衛隊に入隊。テストパイロットとして活躍した。2009年JAXAに入社し、2011年にISS搭乗宇宙飛行士の認定を受けた。2015年からISSに142日間滞在し、21の実験活動を実施した。JAXA宇宙飛行士グループ長。

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