別府市の「温泉染研究所」は現在、柿渋と湯の花を使って生地を染める「天然染色キット」をオンライン販売している。温泉水による染色を研究する服飾アーティストの行橋智彦さん(32)が開発したオリジナルセットで、「自宅で温泉染めを楽しみながら別府を感じてほしい」と話している。
抗菌や生地を丈夫にする目的で古くから染料や塗料として使われてきた「柿渋」と、別府市の明礬温泉で採取した温泉成分の結晶「湯の花」を使い、化学反応を誘発させて染色する。マスクや靴下などを柿渋液に漬けた後、湯の花を溶かした湯に浸して発色・定着させる。染色液の濃度や染色時間などで色の付き具合を変えられるほか、輪ゴムなどを使った絞り染めも可能。染色時は赤銅色から青みがかったグレーなどさまざまな色に変わる様子も楽しめる。
「天然染色キット」(2,000円)は柿渋液と湯の花パックを巾着ポーチに入れて販売。マスクや靴下などを付けたセット(2,500円~)も用意する。染色手順を紹介した動画「おうちで天然染色キットで染めてみよう」も作成。動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信している。
行橋さんは東京都出身。服飾専門学校を卒業後、舞台衣装の製作などに携わってきたが、2011(平成23)年の東日本大震災を機に「もっといろいろなものを見てみたい」と一念発起。ミシンと鍋とコンロを手に「旅する服屋」として全国を旅しながら、その土地の水や植物を染色素材に洋服を製作する活動を続けてきた。
各地を旅する中で別府の温泉にほれ込み、2016(平成28)年に移住。地域の人たちとコミュニケーションを取りながら温泉水を素材とした染色の研究を始めたという。
「温泉染めには地元の温泉の魅力を再確認させる力があると思う」と行橋さん。「温泉染めが文化として根付くまで丁寧にチャレンジし続けたい」と意気込む。
同キットを使用したオンラインイベント「おうちで温泉染め体験 柿渋×湯の花」が10月17日・20日の14時から開かれる。一般社団法人「豊の国専念ロマン観光園」(TEL 0977-85-8511)の主催。行橋さんがビデオ会議システム「zoom」を使って指導する。複数人による参加も可能。1組4,800円。開催日7日前までに申し込みが必要。入金確認後にキットを配送する。