
障害者が描いた別府・鉄輪の絵をデザインした紙袋の製作に携わった関係者6人が8月5日、長野恭紘別府市長を表敬訪問した。
土産物菓子などを製造・販売する南光物産が直売所に障害者アートを展示したことなどを機に、障害者アートの商品開発や販促を手がける「naNka」(以上、別府市)と連携して企画。障害者アートの観光資源化を見据えた取り組みで、イノシタデザイン(大分市)が全体のデザインを手がけ、極東印刷紙工(大分市古国府3)が製品化した。
naNka所属アーティスト・高司祐雅さんの絵画「別府のゆけむりの風景」(2024年)を活用。市内の展望台から見下ろした湯煙が立ち上る鉄輪地区が描かれている。サイズは、幅32センチ、マチ11センチ、高さ25センチで、黄色の持ち手が特徴。製作者などの情報は外観デザインを損なわないよう、底面に印刷した。強度のある製袋原紙を使う。
5日は高司さんと母の理恵さん、南光物産の原口智成社長、naNka代表の梅本弥生さん、イノシタデザイン代表の井下悠さん、極東印刷紙工の笠木信吾社長が市役所を訪れ、長野市長に製作経緯など説明した。
用途は、観光客の土産入れや市民の普段使いを想定。原口社長は「別府の象徴的な風景を表したタッチとポップな色合いに引かれた。『別府ならこれ』となれば」とアピール。梅本さんは「障害者アートを商品化することは当事者への支援だけでなく、別府のPR、観光誘致などにつながる」と強調した。長野市長は「紙袋自体が土産になる。ここまで作り込んであれば大切に使ってくれると思う」と期待を寄せた。
指定難病患者で身体に障害がある高司さんは「昔から絵を描くことが好きだった」と話す。梅本さんから「見る力が素晴らしい」と評価され、今作については写真から感じ取ったイメージと色合いを忠実に落とし込み、鉛筆で下描きし、青空、緑の山、白い湯気に色を付けて描画。ビルや建物は格子柄のスタンプを使って表現した。
紙袋のデザイン採用に「初めはピンと来なかったが、出来上がった紙袋を持った時に出来の良さに驚き、『(絵が)使われたんだ』と実感が湧いた」と高司さん。理恵さんは「皆さんの力で素晴らしい形にしてもらった。心からうれしい」と喜ぶ。
紙袋は5000個を製作した。価格は275円。南光物産の直売所で販売するほか、ネット販売、市内の旅館・ホテルでの展示販売なども予定する。