JR別府駅東口エリアをメイン会場に10月28日、アートイベント「西野達in別府」が始まった。主催は混浴温泉世界実行委員会(別府市野口元町2、TEL 0977-22-3560)
国際的に活躍する芸術家が地域性を生かしたアートを制作するプロジェクトとして開催される同イベントは今年で2回目。公共空間の活用を主流とする西野達さん(57)=東京=が、昨年3月に打診を受けてから約1年半にわたり別府に通い詰め8作品を作り上げた。
イベントは「別府芸術巡り」と銘打ち、JR別府駅東口から徒歩10分圏内のエリアで実施。屋外4カ所に空間芸術を展開したほか、写真作品4点も展示している。
メイン作品の一つ「油屋ホテル」は駅前の油屋熊八像を活用した作品。像を取り囲むように足場を組んで1.5メートルほどの高さに床を作り、周囲を白い壁で覆った2階建て「ホテル」へと変貌させた。
外観だけではなく内部も本格的な仕様となっている。玄関、受付を抜けると熊八像が出迎える応接室が広がる。ベッドルーム、シャワーエリア、トイレ、洗面台なども完備しており、既存の手湯施設を活用した露天風呂も備えている。客室の備品は、今年3月に閉館した花菱ホテルで使っていたものを譲り受けた。「別府の人、湯、歴史の3つの視点を絡ませた」と西野さん。
このほか、発泡スチロールの一軒家、街灯に串刺しになった軽トラックなど、「見る側の想像力をかき立てる作品」を制作。共同浴場を回ってヒントを得たとして、別府タワーを薬師像に見立てるアートも出現させた。
初日は降雨もあったが、駅前の「油屋ホテル」には絶え間なく人が出入り。西野さんのファンで、この日を心待ちにしていたという大分市在住の甲斐寿紀雄さん(32)は「熊八像は自分と同じぐらいのサイズだと思っていたが、目の前にすると想像以上の大きさで驚いた。気付かせてくれるイマジネーションがすごい」と話す。
西野さんは「別府の歴史や空気を自分なりに視覚化してみた。観光客はもちろん、地元の方も作品を巡り歩いて驚くことで、何かを見つけてもらえれば」と来場を呼び掛ける。
会期中の特別プログラムは、「油屋ホテル」を19時30分から翌朝8時30分まで夜間特別観賞体験として一般に開放(12月1日~22日の金曜・土曜・祝前日、1日1組)する。同施設内のベッドルーム、トイレ、手湯を生かした露天風呂などを利用できる。希望者は公式ホームページの予約フォームまたは電話で申し込む(11月10日締め切り)。11月5日18時から別府ブルーバード会館(別府市北浜1)で西野さんのトークイベントも開く。参加無料(要予約)。会期は12月24日まで。