大分県杵築市の大分農業文化公園(杵築市山香町、TEL 0977-28-7111)で3月28日から「ネモフィラブルーフェスタ」が始まる。初開催の昨年は公園の知名度を上げる役割を果たし、入園者数アップに大きく貢献した。2年目の今年は規模を拡大して開く予定で、イベントを機に年度入園者目標33万人を目指すという。「入園者の満足」と「職員の笑顔」を掲げる矢野格園長(62)の周囲を巻き込む行動力に迫った。
――2018年(平成30)年4月に着任する前の仕事を教えてください。
大分県職員の農業関連技術職として生産者と共に産地づくりなどに携わってきました。「マーケット(消費者)起点のものづくり」をコンセプトに、白ネギやイチゴ、サツマイモなどをブランド化(The・おおいた)する仕組みを作り上げる仕事です。大分県の大阪事務所長も務め、関西商圏で大分県産農林水産物を有利のうちに大量流通させる、販路の拡大にも取り組みました。
――開園20年を数える公園の8代目園長となりました。
「新しい環境で社会貢献ができれば」という思いで赴任しました。公園では「年間入園者数33万人」を掲げていますが、開園した2001(平成13)年に45万7500人を数えて以来、目標数を達成していません。年間平均数は約27万人と少ない数字ではありませんが、伸びているわけでもなかったので、まずはここを見直そうと思い、すぐに行動を起こしました。
――具体的にはどのような取り組みを行ったのですか?
全体会議や課内ミーティングを積極的に行い、職員同士の連携を強めるところから始めました。「公園うつくし作戦」と名付けた美化運動に取り掛かり、職員によるトイレ清掃、草取りといった一斉作業のほか、十数カ所あった喫煙所を2カ所に集約しました。イベントでは、これまでに行っていた各種フェスタ、収穫体験、講座に加え、夏に産直の「ふれあい市場」を開きました。秋にはモミジ谷やフラワーガーデンの整備を手掛け、見所のあるゾーンづくりを進めました。コテージの予約を電話からインターネットに切り替えたのもこの頃です。
――そのうちの一つが「ネモフィラ畑」ですね。
9月に開いた公園活性化を図る会議で、園が毎年取っている約1000件のアンケートの中に「一面の花」「花畑」を期待する声が多くある―といった話が出ました。その要望を軸に話し合いを進めた結果が「ネモフィラ畑」でした。すぐにプロジェクトチームを作って始動したんですが、何から始めて良いのか分からない状態だったので、まずは先進地に学ぶことにしました。県内の「くじゅう花公園」(竹田市)や本耶馬渓(中津市)の「青の洞門を青に染めるプロジェクト」の畑を訪ねたほか、国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)、国営海の中道海浜公園(福岡県福岡市)などにも技術的なことを何度も聞きました。
――初めてのチャレンジを振り返ってください。
広い花壇を思い切って畑に変え、11月中旬に種をまき始めました。花が咲くかどうか自信がなかったので、本耶馬渓に毎週通って成長速度を比較したりしていました。大分農業文化公園は標高が高く霜が降りるので、冬には霜よけ用の布を掛けました。「掛けなくても大丈夫」という声もありましたが、先輩格のひたち海浜公園が広大な畑全域に実施していると聞いたので、公園もそれにならうことにしました。実際に、掛けたところと掛けなかったところでは開花時期やボリューム感が明らかに違いました。布を掛けたことで、霜で土が上がって根が切れてしまう現象を防げたのだと思います。そうした中で春を迎え、次々と開花してくれた時の感動は今でも覚えています。
――初開催の「ネモフィラブルーフェスタ」(2019年4月6日~5月6日)の手応えはどうでしたか?
「ネモフィラブルーフェスタ」は大変好評で、4月としては過去最高の5万2000人の入園者となりました。その後も順調に入園者数が増えていて、8月の長雨や台風の影響を受けたにもかかわらず、今年2月の時点ですでに27万人を突破しています。2010(平成22)年以来の30万人台復活もありそうです。
――入園層に変化があったそうですね。
これまでは7割がファミリー層でしたが、昨春は様相が違っていました。ネモフィラ畑が写真撮影を楽しむ若い世代でにぎわっていて、園内であれだけ多くの大学生グループやカップルの姿を見たのは初めてかもしれません。他にもきれいな服を着た女性をモデルに撮影したり、ペットに衣装を着せて一緒にフレームに収まったりする人もいました。来園層の幅が広がるきっかけになったと思います。
――今年のイベントはどうでしょうか?
2年目の今年はネモフィラ畑を拡大して50万本から80万本に増やしています。昨年以上に青いじゅうたんが広がる光景を楽しめると思います。イベント期間中はネモフィラ専用のコーナーを設けて、オリジナルのソフトクリームなどブルーにちなんだ商品を販売する予定です。新しく開発した「ネモフィラ大福」にも期待してほしいですね。
――これからの大分農業文化公園はどうなっていきますか?
ファミリー層、若い世代のほか、長い目線では今後、団塊の世代が自然に増えてくると思います。先日も「ツバキ園どこですか?」と何人かに聞かれました。60~70代は日本の美を求めているのかもしれません。そういった世代に対しても、もう少しアピールしていってもいいのかなと思っています。健康をキーワードに、園内を走ったり、落ち着いて花を楽しんだりできるような形も考えていきたいですね。
――最後に、今後に向けての意気込みを聞かせてください。
目標はあくまでも入園者に自然や農業を楽しんでもらい、満足してもらうことです。そうした公園づくりに、職員に笑顔で取り組んでもらうのが私の仕事。いまだに不安なところもいっぱいですが、みんなの夢を一つ一つ実現していけば結果はついてくると思います。目標に向かって走ると数字は落ちないし、落ちないように努力する。止まるわけにはいきませんね。
(2月中旬取材)
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