大分ゆかりの作曲家・河村典比古さんと歌手の朝風心愛(ここあ)さんの師弟コンビが、新型コロナ沈静化でにぎわいを取り戻しつつある地元で本格的な活動を再開した。12月4日にはおよそ2年ぶりというライブを別府市の繁華街で開き、夜のアーケードに歌謡メロディーを響かせた。
河村さんは歌謡曲やCMソングなど300曲以上を作曲。大分市で楽器店「ミュージックホリデー」(岩田町3、TEL 097-558-4158)を経営し、ビンテージギターの販売、練習スタジオのレンタル、イベント開催などを手掛け、大分の音楽シーンの活性化に努めてきた。「川村典」名で日本作曲家協会所属。
朝風さんは大分市出身。2008(平成20)年に「お母さんの詩」でデビュー。持ち歌に「男海峡夫婦舟」「紙の月」などがあり、自身も作詞を手掛ける。BS放送の演歌番組にもレギュラー出演。ラジオ局の「FMはな」では音楽番組「朝風心愛のE歌100選」のパーソナリティーも務めている。日本クラウン所属。
2人はイベントを通して出会い、朝風さんのつやのある声にほれ込んだ河村さんが2018(平成30)年からマネジメントを手掛けるようになった。ステージを開き、音楽イベントに参加するなどして歌声を披露してきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がったことから2020年2月以降は、主だった活動を自粛していた。
大分県内で新規感染者ゼロの状態が続き、ステージ1となっていることから活動を開始。再スタートの地には、半世紀以上前にバンドマン時代の河村さんがピアノ演奏していた店があったという別府を選んだ。河村さんは「思い出の地の活性化にも一役買いたかった」と話す。
4日は、別府銀座商店街(通称・ソルパセオ銀座)にあるクラブ「フレイヤ」の店前スペースを借り、「別府音泉の休日」のイベント名で開催。飛び入り参加の演奏も含め、19時からおよそ1時間にわたってストリートライブを展開した。
きらびやかな衣装をまとった朝風さんは、マイクを握ると「皆さんの前で歌えるのは本当に久しぶりでうれしい」と声を震わせながらあいさつ。ファンや足を止めた市民らが見守る前で、河村さんの伴奏で「夜桜お七」「リンゴ追分」などを披露したほか、持ち歌の「紙の月」「愛のダダ漏れ」などをしっとりと歌い上げた。
周囲の店舗も商店街の一角に出現した華やかな別世界を歓迎。別府銀座商店街振興組合の松山九州雄理事長は「アーケードににぎわいが加わり、うれしいし楽しい」と喜んだ。久しぶりのステージを終えた朝風さんは「寒い中での温かい声援には感謝しかない。歌える喜びで涙もあふれた」と感極まった表情で話した。
今後は、「別府音泉の休日」の定期開催や、大分市でのイベントも予定。活動自粛中に2人で作ったオリジナル20曲を厳選したアルバム制作も予定する。河村さんは「呪縛から解かれたような気分。これまで以上に積極的な活動を展開し、周囲と共に大分のミュージックシーンを盛り上げていきたい」と意気込む。
1月2日は大分市の祝祭の広場でイベント開催。1月22日には初回と同じ場所で第2回「別府音泉の休日」を開く。