大分市横尾で1月20日、新春伝統の民俗行事「二目川百手(ふためがわももて)まつり」が開かれた。
約480年前の天文年間(1532~55年)に始まったとされる五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を祈願する同行事。二目川地区住民でつくる保存会(岩本龍年会長)が、毎年1月20日に「頭人(とうじん)」と呼ばれるその年の祭主の家で弓矢による的射を行い、一年の吉凶を占う。2013年に市の無形民俗文化財に指定されている。
頭人は同地区の52戸が毎年、順番に引き継ぎ、御神体の掛け軸を保管し、祭り会場を提供する習わし。今年の頭人は阿部光正さん(82)で、好天に恵まれたこの日は阿部さん宅の庭に設営した会場に、保存会メンバー、来賓や地元住民らが詰め掛けた。
式典で岩本会長(65)が保存会所蔵の古文書を見せながら祭りの由来などを説明「戸数が減ってきているが、簡素な形にしてでもこの先100年、200年続くよう、後世に伝えて行きたい」とあいさつ。神事や同地区の神楽保存会による舞いの後、烏帽子をかぶり正装を身にまとった阿部さんと来年以降の頭人となる「頭前(とうまえ)」5人のほか、来賓や市立明治小3年生14人が弓を引いた。
直径約70センチの的を左右に2つ用意。約3メートル後から、順番にそれぞれ3本ずつを放った。手作りの弓とあって射手たちはうまく矢を射ることができずに悪戦苦闘したが、何本かの矢が的に当たると会場は大きな歓声に包まれた。
先陣を切った阿部さんは的をかすめる惜しい矢が何本かあったが当てることができず「毎年1本は真ん中に当たるのに」と苦笑い。同地区自治会長の小野善寛さん(71)は「誰か一人一本でも当たれば良いので今年も『吉』。いい一年になりそうで良かった」と笑顔で話した。