別府市のNPO法人「BEPPU PROJECT」は、アーティストやクリエーターの制作・居住スペース「清島アパート」(別府市末広町)の2019年度の入居者を募集している。「全国から集う多彩な面々との共同生活を生かして」と応募を呼び掛けている。
「清島アパート」は戦後すぐに建てられた物件で、3棟の22室が下宿用に使われていた。2009年に同アパートなどを舞台に開かれた別府現代芸術フェスティバルをきっかけにそのまま住み着くアーティストが現れたため、所有者の好意もあり、毎年約8組のアーティストが生活しながら創作活動を続けられる場所として開放されることになった。同NPOによると「別府はさまざまなアートイベントを通じて『アートのまち』としての認知度が高まっている。10年を迎えた清島アパートは芸術文化の発信地としてあらためて期待されている」という。
運営する同NPOが年に1度、利用者を全国から公募している。例年、県外在住者からの応募がほとんどで、別府やアパートを気に入り、再応募して複数年住み続ける利用者も多い。これまでの入居人数は延べ200人で、ジャンルは絵、映像、写真、ダンス、服飾、落語など多岐にわたる。
2018年度の利用者は9組10人で、初入居組は5組6人。2009年から住み続けている長期入居者もいる。出身地は山形県、東京都、神奈川県、岐阜県、大阪府、福岡県、米国。
行橋智彦さん(東京都)は「旅する服屋さん」として2016年に入居。アトリエを自分色に改装し、別府温泉の成分の違いによって糸の色合いが変化する「温泉染」を研究している。今年入居した絵描きの泉イネさん(同)はアパートに引っ越したことで「いろいろな人との出会いが生まれた」という。「10年生」の画家・勝正光さん(大阪府)は空いた時間に子どもたちにサッカーを教えるコーチ役をこなすなど地域に溶け込んでいる。「別府の魅力を伝えるにはまだまだ。今回も応募する」と話す。
利用期間は4月7日から2020年3月31日までの1年間で、料金は月額1万円(無線LAN費用、水道光熱費など含む)。創作や作品発表用アトリエ(1階)、居住用(2階)の2部屋を利用できる。部屋の広さは約6畳。共用部分は1階と2階のスペース、キッチン、トイレ。風呂は付いていない。
対象は、アーティストまたはクリエーターとして活動をしている、清島アパートの可能性を開拓できる、地域住民とのコミュニケーションを大切にする18歳以上(高校生以下不可)で、ジャンル、国籍、個人・団体は問わない。毎年秋に開催する「ベップ・アート・マンス」での展示公開などを条件としている。
入居希望者は規定の応募用紙に記入し、過去の作品ファイルと共に2月22日までに郵送する。書類選考と2次の面談で決定する。審査結果は3月11日に「BEPPU PROJECT」のホームページで発表する。
同NPO担当者は「各地から集まった多様なジャンルのアーティストと交流できる数少ない場所。地元からの応募も歓迎。来年度も利用者、運営者、地域住民が交流、連携、触発して盛り上がる、活力のあるスペースにしたい」と話している。