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大分県が種なしカボス「大分果研6号」登録へ 複数長所持つ期待の新品種

左から「香美の川」「大分果研6号」「大分1号」(大分県農林水産研究指導センター提供)

左から「香美の川」「大分果研6号」「大分1号」(大分県農林水産研究指導センター提供)

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 大分県農林水産研究指導センター農業研究部は現在、カボスの種なし新品種「大分果研6号」の登録を出願している。「大玉で栽培がしやすく貯蔵性も高い」という複数の長所を併せ持ち、関係者から大分のカボスをさらにアピールする新商材として期待されている。

種なしカボスの新品種「大分果研6号」(大分県農林水産研究指導センター提供)

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 同部果樹グループのカボス・中晩柑(かん)チーム(津久見市津久見浦福)が3月12日、2018年10月に農林水産省に「大分果研6号」の品種登録出願を行い受理されたと発表した。

 消費者や生産者から寄せられていた「種が多いので使いにくい」「種なしは小玉で収量も少ない」といった声に応える新品種。染色体が4組の「4倍体カボス」(在来種)に2組の「2倍体」(豊のミドリ)を掛け合わせた「3倍体カボス」(大分果研6号)で、奇数(3組)の染色体を持つことで遺伝的に分裂しにくくほぼ種なしになるという。

 同チームによると「6号」は、従来の種なし系品種よりも大きく、果汁歩合も同等。花の付きが良く、熟期も早い。果皮の色付きも良く、貯蔵中の緑色保持は現在主流の「大分1号」よりも優れているという。「着花性の良さ」はハウスものとしての早期出荷(3~7月)を可能とし、「早熟性」の特徴から露地ものとしての早出し(8月上旬)にも期待できる。「貯蔵性の高さ」は長期貯蔵(10月~翌年2月)につながるという。

 新品種の開発は1980年代の4倍体抽出から始まった。母親となる4倍体自身が2倍体の突然変異で、出現頻度が極めて少なかったことから、大量の種をまいて育てたものの中から探し当てたという。2001年から大玉で種ありの「豊のミドリ」との交配・採種を繰り返し、胚培養技術を用いて25個の3倍体を作出。接ぎ木で着花を促進し、2011年に25個から最も特性や品質に優れた「3X-21」を選抜した。昨年8月に開かれた県の品種登録出願審査会で承認を受け、10月に品種登録を出願した。

 足かけ約40年という期間で担当者も代替わりしており、研究員の桂奈央さん(28)は「先輩たちから受け継いできた一つの研究が実った」と話す。チームリーダーの楢原稔さん(55)は「副産物として長所ともなるさまざまな特性を加えることもできた」と振り返る。

 今後はハウス栽培での研究などを重ねて登録を待つという。楢原さんは「通年の出荷安定に役立つ品種として生産現場からの期待の声も大きい。消費者にも使い勝手の良い新しいカボスなので、登場を待っていてほしい」と話している。

 大分のカボスはハウス、露地、貯蔵と周年出荷できるのが強みで全国シェアは約97%となっている。品種は、種の多い「大分1号」「豊の緑」、種が少ないが小玉で収量の少ない「香美の川」「祖母の香」の4種。1973(昭和48)年に選抜された「大分1号」が県内栽培の8割を占めている。毎夏、果汁歩合が20%以上に達すると「旬入り宣言」を行う。2017年5月に「大分かぼす」として柑橘(かんきつ)類初の地理的表示(GI)保護制度に登録された。

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