大分市の富士見水産(佐賀関店=大分市佐賀関幸の浦、TEL 097-575-4122)は現在、大分のブランド魚「関あじ」を通常小売価格の4割引きで一般販売している。新型コロナウイルスの影響で物流が縮小し、だぶついた分を食べてもらう対応だが、食べごろサイズが1,000円引きになるなど「新鮮な高級魚を格安で味わえる」として購入の輪が広がっている。
同社は大分県漁協佐賀関支店認定の仲買。地物の活魚、鮮魚、加工品などを取り扱っているが、外出自粛や休業要請による外食消費の冷え込みを受け、東京、大阪、福岡への出荷が激減した。「関あじ」などの高級魚は、大分市都町をはじめ大都市の料亭、すし店、ホテルなどでの利用が多かったため、行き先に行き詰まった。1981(昭和56)年の創業以来初めての苦境で、社長の姫野透さん(57)は「東日本大震災(2011年)の時に少しの落ち込みはあったが、ここまでではなかった」と話す。
「従業員6人の生活はもちろん、漁師の生活も考えないと」と姫野さん。漁師が釣ってきた高級魚の「行き先」として、一般への割り引き販売を選んだ。利益率は市場出荷と変わらないというが「取扱量は5分の1から10分の1になっている。単純に苦しい」と胸の内を明かす。
3月下旬、同社の小売価格から40%引きとし、店頭と冷蔵便で販売すると、まずは「フェイスブック仲間」に呼び掛けた。投稿が拡散し、市民らが購入に訪れるようになったほか、全国から注文も入るようになった。「予想以上の反響。関ブランドの力をあらためて知った」と姫野さん。
刺し身にして2、3人分という500グラム(約35センチ、通常2,700円)の型を1,620円で販売。釣果にもよるが、概ね200グラム(648円)~700グラム(2,268円)の幅で用意している。内臓の取り出し(110円)、三枚おろし(330円)、姿造り(1,320円)は別料金。
4月16日も県内のほか静岡県などから注文が入ったほか、地域住民が代わる代わる来店した。大分市の親子連れは、いけすを見学した後に1匹を購入。母親は「近所のスーパーでは売っていないし、高いのであまり食べる機会もない。刺し身にするのが楽しみ」とうれしそうに話した。姫野さんも「お客さんに喜んでもらうことが一番」と肩の力を抜き、笑顔を見せた。
「関あじ」はこれから夏に向けて旬を迎える。割引販売も当面は続けていく予定で、姫野さんは「関あじを食べてもらう良い機会と考えている。顔で笑って心で泣いて広くPRしていきたい」と話している。
全国発送可能。銀行振り込みまたは代引き。入金確認後、発送する。クレジットカードは使用できない。手数料は利用者負担。受付時間は9時~16時。
「関あじ」や「関さば」は佐賀関漁港に水揚げされるブランド魚。潮流の速い豊予海峡で育つため、身が締まり、脂が乗っている。「一本釣り」で魚を傷付けることなく1匹ずつ釣り上げ、活魚や「活(い)け締め」して鮮度を落ちにくくして出荷するなど、品質保持の処置と管理を徹底している。このほかの「関もの」に、「関ぶり」「関たい」「関いさき」がある。