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大分市高崎山の元ボスザル「ゾロメ」死す 「ソダネ」に生のバトン託し

動けなくなったゾロメの横に現れたソダネを抱えたダンダン(高崎山自然動物園提供)

動けなくなったゾロメの横に現れたソダネを抱えたダンダン(高崎山自然動物園提供)

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 野生サルの餌付けで知られる大分市の高崎山自然動物園(大分市神崎、TEL 097-532-5010)の元C群のボスザル「ゾロメ」(推定31歳)が、今年の第1号赤ちゃん「ソダネ」(雌)が生まれた同時期に死んでいたことが分かった。

元C群ボスザルのゾロメ(高崎山自然動物園提供)

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 同園によると、5月9日に園内の一角で伏せて動かなくなっているのをスタッフが発見した。死因は老衰とみられる。人間の年齢では90~100歳に当たる。一般的に大人のサルは死に際を見せることはなく、死体の確認は極めて珍しい。園内での死亡も過去に例がないという。

 ゾロメは、2つの群れで頂点に立った伝説のボスザル・ベンツの後継者で、C群の第10代ボス。2013年10月にベンツが失踪事件の3週間後に園へ戻った際、ナンバー2のゾロメがベンツの毛づくろいをしてボス復帰を認めた。サル社会では通常1週間以上群れを離れると復帰できないとされるが、ゾロメはベンツへの忠誠を貫く姿を見せた。2014年2月に約800頭の群れのトップに立ち、2016年4月にオオムギにボスザルの座を譲った後、新たな恋愛相手を求めてB群に移っていた。雄ザルとしては気性が穏やかで物腰も柔らかく、母親を亡くした子ザルの面倒を見ることもあった。「サルにも人にも慕われた大人のサルだった」という。

 5月8日10時ごろ、年老いて山に帰れなくなったゾロメが園内にある寺の一角で座り込んでいるところにC群が遭遇。ボスザルのブラックが、威嚇する若ザルを制してゾロメの周りを回って確認。攻撃することなくそのまま去った。その後はシャーロットなどの子ザルがゾロメの毛づくろいを始めたという。スタッフの藤田忠盛さん(47)は「通常、別群れのサルにはかみ付くなどの攻撃をするが、ブラックはゾロメの死期を悟り、手を出さなかったと考えられる。人間的解釈でいうと元ボスの魅力を覚えていて、最後にいたわったとも取れる。その態度は本当に格好が良かった。シャーロットの行為も感動的。こういったサルたちの行動は今までに確認できていない。ゾロメは私たちに新しい経験を積ませてくれた」と話す。

 その後、ゾロメは横になってほとんど動けなくなり、スタッフが交代で30分置きに様子を確認した。そうした中でソダネを抱えたB群のダンダンが姿を見せた。ゾロメを見守る行為が第1号赤ちゃんの確認につながり「生と死」が重なり合う偶然に、スタッフたちは「生まれ変わりを連想した」という。ゾロメは18時まで生存が確認されていたが、9日早朝には動かなくなっていた。

 B群に移った際、群れの最下層にはなったが、ゾロメの周りには常に新しい血を求める雌ザルがおり、昨年生まれた子ザルと今年の赤ちゃんの中にゾロメの子どもがいる確率は高いという。「お客さんの中には『ソダネはゾロメの子どもではないか』と想像を膨らませる人もおり、もちろんその可能性もある。そういったロマンも最後に残してくれた」と藤田さん。ソダネは順調に育ち、来園者の前で元気いっぱいの姿を見せている。

 園ではゾロメの功績を鑑みて、剥製にして同園おさる館内の「おさる資料室」に展示する予定。初代ボスザルのジュピター、伝説のベンツに並べてゾロメコーナーを設けるなどして、来園者にその生きざまを伝えていく。

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