別府市の印刷会社「クリエイツ.」(別府市亀川東町4、TEL 0977-66-3676)は現在、「大分県の民話 総集編」を販売している。同社の先代が取材から発刊までを手掛けた複数の著書を娘夫婦が再編集した一冊で、「努力と行動によって残った大分の昔話を多くの人に読んでもらいたい」としている。
「クリエイツ.」の前身「つちや印刷」を創業した土屋北彦さん(92)は大分県の各地で口頭伝承されてきた話を残す目的で、1951(昭和26)年から聞き取り作業を始めた。古老が語る話をテープレコーダーで録音し、古文書などを参考に約300話分をタイプライターで活字化。これまでに「大分県の民話」「大分の民話」「豊後杵築の民話」のタイトルで書籍にまとめた。テレビ番組「まんが日本むかしばなし」などに使われたこともあったという。
そうした70年に及ぶ財産を後世に有意義な形で残そうと現社長の森宗明さん(66)と、妻で、北彦さんの娘の北実さん(66)が10年をかけてデジタルデータ化。再編集して6月30日に総集編として出版した。
森さんは「義父が取り組んでいなければ、記録にも記憶にも残らなかったであろう民話を、今度は私たちの手で残したいと思った」と話す。北彦さんも本の出版を喜んでおり、北実さんは「父が存命のうちに出版できて本当に良かった」と笑顔を見せる。
大分市の高崎山のサルが助けてくれた男に恩返しをする「猿酒」、臼杵市野津町の庄屋がモデルとされる吉四六さんのとんち話など、大分県に伝わる伝説、昔話、落語など250話を掲載。大分弁の語り口で自然や老人への畏敬の重要性などを伝えている。
「データ化したことで、今後は多様な形で多くの人に民話を紹介できる」と森さん。現在は絵本化を進めており、「総集編」と合わせて県内の小学校へ寄贈するプランも練っている。森さんは「自分たちが生まれ育った歴史に触れ、郷土愛をはぐくむことにつながれば」と話している。
B5判、348ページ。価格は2,200円。「クリエイツ.」で販売し、郵送も受け付ける。