別府市を中心に活動する全盲の落語家・噺屋(はなしや)ザトーさん(33)が11月21日、別府市の「カレーやmomo」(別府市楠町、TEL 0977-77-1842)で9カ月ぶりの寄席を開いた。見えないことで経験した小話や大分弁の落語でファンらを笑わせ、自らも「やはり人前で披露できるのはうれしい」と久しぶりの高座を楽しんだ。
ザトー(本名・衛藤宏章)さんは大分市出身。幼い頃から視力が弱く緑内障が原因で、23歳で失明した。視力を失った当初は落ち込んだが「声を使って表現したい」と、子どもの頃に熱中していたという落語を学び始めた。拠点を別府に据え、盲目の居合切りの達人「座頭市」から取ったという屋号で活動を開始。昨年まで喫茶店や公民館などで年間40~50本ほどの公演を行ってきた。
今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で春以降、活動の場をなくしていたところ、行きつけだった同店のオーナー・石川千世子さん(52)から声が掛かり、小規模の独演会を開催することにした。
21日は14人が来店した。ザトーさんは「毎日の食事が闇鍋」「音声読み上げソフトが『桐生選手、五輪では金(カネ)が欲しい』と読み違えた」といった小ネタで会場を笑わせ、大分を舞台とした「朝見詣で」「日田の関サバ」を大分弁で披露した。30代男性は「別府で落語があると知って楽しみにしていた。とても面白かった」と満足そうに話した。
今後の活動は未定ながら「感染の状況を見ながら小さな寄席を開いていきたい」と石川さんは協力的。ザトーさんも「盲目であることで経験する特殊な出来事を面白おかしく語りたい。開催できたら足を運んでほしい」と前向きだ。