別府市北浜の古物件を利用者自身が手を掛けて育てていく「BASARAHOUSE」(バサラハウス)計画が、6月30日のオープンに向けて順調に進んでいる。
バサラハウス について説明する宮川さん(右から2人目)と清川さん(同3人目)
同市の旅館「山田別荘」の女将・山田るみさんと、「たべもの建築家」として活動する宮川園さん(30)が「気軽に『試住』できる拠点を作りたい」として企画。別府ラクテンチの「湯(ゆ)~園地(えんち)計画」を総合監修した音楽作家の清川進也さん(41)がサポートする。
海門寺温泉にほど近い「恐らく築100年ぐらい」という木造3階建ての物件で、面積は約265平方メートル。1階にイベントスペースとカフェを設け、2階の客間6部屋をゲストハウスとして活用する。それぞれ基本的な改修以外はせず、そのままクリエイターやアーティストなどに貸し出す。
コンセプトは「育つ家」。大正~昭和の香りが残る客間は3~8畳で、造りもそれぞれに異なる。「利用者に部屋を選んでもらい、そこに住みながら内装などを自由に変えて新しいアート居住空間を生み出してもらう」と清川さん。「成長するには『余白』が必要。スペインのサグラダ・ファミリア教会のように『未完成』が続く家にしたい」
1階のイベントスペースの壁はむき出しのままで、天井、はり、柱などもそのまま残している。壁については、新しく塗り直す作業をワークショップとしてイベント化。ライブやダンスなどの催しも行い、地域住民とのコミュニケーションエリアとして活用する。
カフェは短期間での利用が可能。「試住」から別府に移り住んで9年という宮川さんは「まずは暮らして店を開き、別府経験を積んでもらえれば。アドバイスもできるのでうまく利用してほしい」と、その有用性について説明する。
「BASARA-」の書体は、映画館の看板を描いてきた99歳の松尾常巳さんによるもの。真ん中の「A」は別府タワーをデザインした。4月29日にはプレオープンイベントの主役として現地に足を運び、関係者らが見守る中で店先のガラスに片仮名で「バサラ」の文字を書き入れた。松尾さんは「ガラスに書くのは難しかったが、まあまあの出来」と笑顔で話した。
今後は客間などの基本改修工事を進め、6月30日には壁を塗るワークショップを含めたオープニングイベントを実施する。清川さんは「『バサラ』は古くは粋などの美意識を表す言葉として使われており、自分の出身地の福岡県飯塚市では『ものすごい』という意味に当たる。アーティストや利用者が自分たちの価値を伝えることができ、地域の人はさまざまな創意工夫を体感できる新しい場所にしていきたい」と意気込んでいる。
今後の展開や活動についてはフェイスブックページから確認できる。